小さな扉を見た話

小さな扉を見た話

これは、俺が小学校四年のときに実際に体験した話です。

その日、昼からずっとお腹の調子が悪くて、夜になっても痛みが残っていました。
それを見た母が「今日はこっちで寝なさい」と言って、両親の寝室で寝ることになったんです。

その部屋は、家の中でも特に日が入らない場所にあって、神棚と仏壇が並んでいました。
子どもの頃から、なんとなく空気が重くて、少し怖い部屋でした。
でもその夜は、言われるまま布団に入って眠りました。

その夜、二時から三時の間だったと思います。
夜中に尿意を感じてふと目覚め、トイレへ行こうと思って起き上がりました。
そのとき、部屋の少し先、丁度神棚の少し前辺りに小さな扉があったんです。

膝くらいの高さで、西洋風のデザイン。
どこから出てきたのかまったく分からない。
しかも、ぼんやりと青白く光っていました。

怖いというよりも「なんだこれ…」という好奇心のほうが強くて、しばらく見つめていました。
現実感があるのに、どこか夢の中みたいな光景で、幻想的というか…異様でした。
1分くらい、ただその扉を見ていたと思います。

ふと気づくと、その扉が少しだけ開いていました。
ほんの数センチ、向こうが覗けるくらい。
扉の先には何も見えず、暗闇が広がっていました。

それを不思議に思って見ていると、いつの間にか
扉から四つん這いの人型の小さなものが半分ほど出ていて、
そのままの姿勢で止まっていました。
最初はソレがなんなのか認識できませんでした。
ピタッと止まっていて、身長は50㎝くらい。
人にしては小さすぎましたし、俯いていて顔は見えず、
最初はビスクドールのように見えました。

じっと見ていると違和感に気付きました。
その手が、人形のものじゃなかったんです。
皺だらけで、骨が浮き出ていて、異様に細い。
まるで、年寄りの手のようでした。

そのことに気付いた瞬間、全身に鳥肌が立ちました。
怖くなって逃げようとしたのですが、体が動きませんでした。
金縛りのような状態で、息だけができる感じでした。
必死に隣で寝ている親を何とか起こそうともしましたが、
目も逸らせず、声も出せず、手も伸ばせませんでした。
焦っていると、そいつが四つん這いのまま、
まるで映像を早送りしたような速さで俺の方へ向かってきたんです。

気づいたときには、目と鼻の先にいました。
頬はこけ、皮膚は張り付いたように硬く、くすんでいました。
口は半開きで、乾いた息がかすかに漏れています。
目は大きく見開かれて、焦点が定まらず、ぎょろりと光っていて
何かを求めるように、俺へ手を伸ばした状態でまたピタッと止まっていました。

しばらく、そいつと目を合わせていました。
時間が止まったかのようで、空気の匂いさえ濃く感じました。
視線をそらしたいのに、体が固まって動かず、息をするのも怖かった。

恐怖が限界を超え、頭の中で何かがぷつんと切れたような感覚が走った。
その瞬間、そいつも、扉も、すべてがふっと消えました。

残ったのは、異様な静けさと、自分の心臓の音だけでした。

その後、すぐに母を起こし話しましたが、「夢でも見たんじゃない?」と笑われました。
あのとき見た青白い扉とあの手の皺だけは、今でも忘れられません。

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