電話ボックス

電話ボックス

私の先輩が、まだ中学生だった時の体験談です。

当時、携帯電話などというものはなく、男の子が好きな女の子の家に電話をする行為は、ちょっとした一大イベントでした。

親の目を盗んで自宅から電話をする方法もあったのですが、彼の家ではそれも難しく、数人の友人と一緒に、近所の電話ボックスまで行って、一大イベントを決行することになったのだそうです。

電話ボックスは、車が1台通れば人が体をかわして避けなければならないような細い道が、少しだけ膨らんだ場所にあり、左側は高い石垣、右側は崖のようになっていて、街灯に照らされてぽつんと立っていました。

10メートルほど離れた場所から電話ボックスを見ると、中に女の人がいるのが見えたので、みんなでそれを確認して、少し離れた場所で、その女の人の電話が終わるのを待っていました。

ところが、女の人が長話しで、なかなか電話が終わりません。

あまり時間が遅くなると、好きな女の子の家に電話しづらくなってしまいます。

そこで彼らは、「僕たちも電話したいんだよ〜」っという雰囲気で、電話ボックスに近付いて行くという作戦に出ました。

みんなで一塊りになって歩いて行き、電話ボックスまであと3メートルという所まで近付いた時、中にいた女の人が、電話ボックスのドアも開けず、反対側の崖の方に向かってスーッと出て行くのが見えたんだそうです。

数人いた友人全員が同時にそれを目撃したので、絶対に見間違いではないそうです。

その後、みんなで一斉に彼の家まで逃げ帰ったということでした。

その翌日、学校でその話をすると、彼らは一躍ヒーローとなり、しばらくの間、彼らのクラスでは心霊ブームが巻き起こったそうですが、夜な夜な電話ボックスに集まる中学生に近隣からクレームが挙がり、学校から大目玉を食らった彼らの心霊ブームは、あっという間に終焉を迎えました。

それでもその話は、彼らが同窓会などで集まる度に、彼らをその当時に一気にタイムスリップさせる、最高の思い出になったそうです。

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