自分が見ている

中高一貫男子校に通っていた、中学三年生の頃の話です。
※読むと不快な気持ちになるかもしれませんので、ご注意下さい。お話に出てくる名前は、全て偽名です。

僕は、家庭の事情で、親元を離れ、寮に住み、その学校に通っていました。ある日、二時間目の授業が終わってすぐに、同級生のA君が、僕に怒ったように話しかけてきました。

「お前、さっき猫を窓から落としていただろ。なんでそんなことをするんだ。先生に言うからな。」

彼はそんな事を言いました。でも僕は、そんな酷いことをした覚えはないし、小さい頃から猫や犬が好きで、家では飼えないけれど、友達の家に遊びに行った時に、よく猫と戯れていました。僕は、「そんな酷い事しないよ。猫好きだし。見間違えじゃないかな?」言いました。でも、A君は、「色白で小柄な奴で、目元もお前にそっくりだった」と言うのです。

その時、僕の幼馴染であるY君がやって来たので、僕はその話をしました。

A「今朝、旧校舎の窓の外から〇〇(僕)が猫を落としていたんだよ。猫はだいぶ弱っていて、足を引きずりながら逃げていったんだ」

Y「今朝…?学校来てから俺は顧問の先生に用事頼まれてて、1人じゃ時間かかるから、〇〇に手伝って貰ってたけど…」

Y君が言うとおり、僕は今朝忙しく動いていて、旧校舎などには行っていません。というか、旧校舎は、数十年前に使われなくなっていて、先生でさえ立ち入り禁止なので、入るわけがありません。僕らがそう話すと、A君は、よく分からないというふうに首をかしげながら席に戻りました。

その日から数日後、学校が終わり、寮の部屋で1人ゆっくりしていました。2人部屋なんですが、もう1人のT君は、部屋にいませんでした。僕が2段ベッドの上に寝っ転がり、小説を読んでいると、ある先生が部屋にノックもせずにやって来ました。

先生「おい、〇〇。お前、玄関の所で、他の生徒を襲ったらしいな。今すぐ下に降りてこい。」

先生は、険しい顔で僕を見ていました。その無言の圧に押され、言う事に従い、階段をおりて、寮長の部屋で、先生と僕、寮長の三人で話し合いをしました。二人が言うには、僕が寮に帰って来て、廊下を彷徨いていて、大声で笑っていたので、ある生徒がそれを注意したら、殴りかかってきたということ。僕は全くもって覚えがないので、それを主張したのですが、その生徒が部屋に入ってきて、僕を睨みつけました。その子は、保健室で治療を受けたようで、頬にガーゼを貼っていて、血は止まっていたけれど、唇の端を切ってしまっているようでした。まだ制服を着ていましたが、かなり揉み合ったように乱れていました。

それから、僕は、何もしていないのに停学になるのでは、と怯えていました。ですが、被害にあった生徒は、僕を訴えることはしませんでした。その代わりに、学校中にその噂が流れてしまい、誰とすれ違っても、じろりと見られるようになり、しまいには、いじめを受けるようになりました。教科書や上靴(スリッパ)を池に投げ入れられたり、虫の死骸をベットのシーツの下に入れられたり、金を盗まれ、殴られたり蹴られたり。学校の一部の先生は、それを知っているようでした。でも、誰も助けてくれない。親に言う事は出来ませんでした。僕は、元々母親と義父から、人間扱いされていなかったので、あの家に戻るよりかは、学校でいじめにあっていた方が、楽でした。ですが、次第にいじめという域を越え、ある日、高校生4、5人に、服を脱がされ、犯されました。その時撮られた写真が出回り、同級生からもいつもと違う変な目で見られるようになりました。僕は、部屋に篭もるようになり、誰が来ても、絶対に部屋から出ないようになりました。同室の生徒も別の部屋に移り、部屋は僕だけのものになりました。僕は、何も無い寂しい部屋で、ベットに座り、脚をバタバタと無心で動かしていた時、窓の外から声が聞こえました。その声は、聞いた瞬間、懐かしいな、と思う声でした。

?「学校行かないの?…勉強しないと怒られてしまうよ…?」

高い声だが、男のものだと分かりました。この時間は、みんな学校で授業を受けているはず。じゃあ誰の声だ?、そう思い、ベットから降りて、窓の外を見てみましたが誰もいません。

僕「誰だよ本当に。僕をいじる為だけに学校休んだのか?」

僕は怒鳴りましたが、返事はありません。僕は考えないようにしようと、再びベットに戻り、掛け布団を深く被って、目を瞑りました。
何で目が覚めたのでしょうか。確か、体に重さを感じて苦しくて目が覚めた気がします。掛け布団を深く被ったまま目が覚めて、起きようと思い、掛け布団から顔を出した瞬間、目の前の男と目が覚めました。

僕「うわっ!?」

僕は、思わず大きな声を出しました。その男は、上裸で、うちの学校の制服ズボンを履いていました。僕は上裸の学生らしき男が自分に覆い被さっていた事に驚いたは驚いたのですが、叫んだ理由は、その男は、いつも鏡で見る自分の顔にとても似ていたからでした。自分が目の前にいる。そして、そいつは声は出ていないが、ニタニタと口角を上げて笑っていました。僕は、恐怖で鳥肌がたち、思わず漏らしそうになりました。目の前の男は、僕を見下ろして言いました。

?「学校行かないの?…勉強しないと怒られてしまうよ…?」

僕はその冷たい声を聞いた瞬間、気絶してしまいました。朝起きて、一番に学校に行き、HRが始まる直前まで、トイレに篭っていました。思い出すだけで膝が笑いだし、背筋が凍りました。学校では、「1人で部屋に篭っていたのに、今日は来たんだな」などとからかわれましたが、あの部屋には戻りたくない、という思いだけが強く頭を支配しました。学校が終わってからも、学校が閉まる直前まで、学校の裏庭などに隠れ、寮に帰ってからも、寝る直前までトイレや職員の部屋に隠れていました。相変わらず、廊下を歩いていたら後ろから背中を思い切り蹴られて転んだり、階段から突き落とされそうになったりしました。それでもあいつにだけは会いたくないと、我慢していました。

ですが、最初に現れた日から、毎日のように夜目が覚め、あの男が現れるようになりました。

僕は、気が気ではなくなり、精神も安定せず、トレーにのせた食事を床に落としてしまったり、化学の実験で使う器具を落として割ってしまうようになりました。それを、唯一僕に優しくしてくれて、心の拠り所となっていたY君が心配し、もう一度寮長に話してくれました。寮長と僕が話し合い、隣でY君が泣いている僕の背中を撫でてくれました。僕は、これまでやられたいじめの事、毎日夜中にみる自分によく似た男の子のことを話しました。すると、寮長は、僕に断り、電話をかけ始めました。僕らはそれを見守っていましたが、その場で二時間ほど待たせられた後、ある年老いた男性がやって来ました。その男性は、三代前の寮長をしていた人らしく、僕を人目見た時、驚いたように目を見開いていました。僕は、上擦った声でたどたどしく話す、男性の話に聴き入りました。

男性「君が言っていた幽霊の話なんだが、それは、高校生だった伊藤くんの事だと思う。伊藤くんというのはな、頭が良く、綺麗な顔立ちをした学生でな、明るい性格でいつも人に囲まれていた。だが、その子は、同級生とその彼女を殺してしまい、後に友人に殺されてしまったのだ、この寮のトイレで。」

「後から知ったんだが、彼は小学校二年生の頃に担任の男教師に性的虐待を受け、その後に母親と担任が再婚し、いつも二人から思わず口を覆ってしまう程の暴力を受けていた。それからの彼は、人を信じることが出来ず、周りに好かれるように自分を偽り振る舞うようになった。ひたすらに勉学に打ち込み、成績も良くなると、教師達からも優等生として見られるようになった。しかし彼は、陰で齋藤くんという同級生をいじめていた。齋藤くんは、いつも伊藤くんを気味の悪い笑みを浮かべて見つめていたそうだ。それは、放課後、伊藤くんが当時の担任の男教師と性行為をしているのを、荷物を取りに戻ってきていた齋藤くんは見てしまったからだった。伊藤くんは、口封じのために、自分の取り巻き達に彼をいじめさせていた。そのいじめを、同級生の土屋くんに見られたのだ。土屋くんはスポーツが得意で、周りからの評価も高く、友達も多かったが、伊藤くんのことをあまり好きではなく、いつも避けていた。彼に見られてしまったので、きっとあいつは周りに言いふらす、そしたら今まで積み上げてきたものが全て崩れる、と思い悩み、追い詰められた伊藤くんは、彼を殺すことにした。自分の恋人になることを約束とし、教頭先生に職員室の床から梯子で降りれる地下の小さな部屋に、土屋くんとその彼女の麻美さんを閉じ込め、数人で暴行等で殺したんだ。だが、その処理をしている途中に、担任や教頭先生と体の関係を持っていることを、幼馴染で、告白してきた、東くんに露見し、トイレの中で、刃物で滅多刺しにされ、解体されて樹海に埋められたそうだ。それから、伊藤くんの幽霊を見たという学生が現れるようになり、ある部屋に人が寄り付かないようになった。その部屋が、君のいる部屋だよ」

その男性は、僕を見ながらそう言った。僕は、後ろから抱きついてくる伊藤くんに怯えながら頷いた。

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