初めての心霊体験談
私が小学生だった頃、私の両親は小さなアパートを経営していました。
1階が私の家で、外の階段を上がって2階の右手にドアがあり、その奥には小さな廊下があって、それを取り囲むように左右に3つずつ、全部で6つの部屋が並んでいました。
今時の小綺麗なアパートとは違って、間取りは全部4畳半。共同トイレでお風呂もなく、いわゆる苦学生が大学にいる間だけ借りるような、かなりのおんぼろアパートでした。
ある日、学校から帰ってきた私は、母の言いつけで、2階の廊下にあるゴミ箱のゴミを持って降りるように言われました。
外階段を登り、右側のドアを開けて、廊下のすぐ脇にあるゴミ箱の袋を出そうとした時、今は空き部屋になっている左の一番奥の部屋から、赤いシャツを着てGパンを履いた男の人が、部屋のドアを半分開けた状態で私の方を見ていました。
入れ替わりの多いアパートでしたので、きっとまた誰かが内覧をしに来ているのだろうと思い、その人に軽く会釈をすると、その男性が
「お手伝い? えらいね。」
と言ってくれたので、照れくさかった私が
「いえ。」
とだけ返事をすると、その男性は黙ってスッとドアを閉め、部屋の中に入っていきました。
その後、ゴミを持って下に降りた私は、それを母に渡す時、
「誰かお部、屋見に来てるの?」
と尋ねると、母は急に顔色を変え、家の中の父を呼びました。
どうやら、今日お部屋を見に来る予定などなかったらしく、泥棒か不審者が入ってきたのかも知れない、と思ったのだそうです。
私は家の中で鍵をかけて待つように言われ、ゴルフクラブを持った父と素手の母と、バットを持った高校生の兄と3人で、恐る恐る2階に上がって行きました。
階段のドアを勢いよく開けて確認しても、廊下には誰もいません。
それどころか、私が会話をした男の人がいた部屋は空き部屋だったので、鍵がかかっていて、開かなかったそうです。
1つしかない外階段では、誰ともすれ違っていません。
その時間、アパートの住人は皆、学校に行っていて誰もいなかったので、結局私の見間違いだろうということに話は落ち着きましたが、私は間違いなく、その男性と会話をしたのです。
ただ、未だに不思議なのが、赤いシャツとGパンという服装は鮮明に覚えているのに、どうしてもその男性の顔や表情が、全く思い出せないことです。
やはりあの人は、この世の人ではなかったのでしょうか?
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